「長生きしたい」から「いつまでも若く健康でいたい」へ
かつて人々の願いは「長生きしたい」という事でした。医学は大きく変化しています。長生きする事が願いだった頃は疾病の治療法、手術の方法、医薬品の開発と、事故にあったり病気にかかったりした方を対象とした進歩でした。しかし人々の願いが単なる長生きに留まらなくなると同時に進化を遂げ、近年では疾病の早期発見、予防といった事前に食い止める予防医学、そして予防や治療では追いつかない部分には再生医学、遺伝子治療といった神の領域に踏み込んだところにまで発展しました。そして人々の願いはいつしか「いつまでも若く健康でいたい」と形を変える事となりました。
ある方が都心で定年を迎え老後をのんびり過ごしたい為に地方へ移住したところ、そこは高齢化が進んでおり、60代はまだまだ「若い者」扱いで自治体の役員や消防団などへ参加を余儀なくされ、全然悠々自適な生活が送れないという話を聞きました。電車でも60代の方に席を譲ると年寄り扱いされたと怒られたりします。こういうことを聞くと高齢者、老後という概念が大きく変わっている事を実感しますね。
老化ということ
人は生まれてから知能や体力など様々な体の機能を発達させます。そして一定のピークを迎えた後はそれらが徐々に低下していきます。これが老化です。下の図はそういった体の機能と年齢との関係を表した老化のイメージ図です。老化には、脳の衰えや体力、体の機能の衰えなどいろいろとあります。中年に差し掛かると皮膚や髪の毛の老化、更年期障害などから始まり、認知症、骨粗鬆症、老眼、難聴、歯の消失などのリスクが高まってきます。
長寿社会と介護
人間誰しも時間が経てば歳をとります。年齢を重ねると段々肌や髪の毛といった外観、体力や記憶力といった能力が衰えてきます。怪我をしていなくても、病気をしていなくても、できる事は年々減っていきます。そして一定ラインを下回ると自立した生活が難しくなって行き、介護が必要になる可能性が高まるのです。
下の図は体の機能の衰えにより自立した生活が難しくなるラインを加えたイメージ図です。
昔は自立した生活が難しくなるラインまで老化が進む前に病気や怪我などで命を落としていました。しかし医学が発達し、平均寿命が飛躍的に延びた現代では、病気だけでなく単なる体の機能の衰えにより介護が必要になる可能性があるのです。